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七姫物語 

作者/高野和  イラスト/尾谷おさむ

電撃文庫

 





『七姫物語』シリーズ・レビュー (

『七姫物語 (1)』 (
) →bk1/→Amazon
『七姫物語 第二章 世界のかたち (2)』 (
) →bk1/→Amazon






『七姫物語』シリーズ・レビュー  作者/高野和  (中上)
電撃文庫  イラスト/尾谷おさむ
writer:D-human

 

 ある大陸の片隅。そこでは、主要都市が先王の隠し子と呼ばれる姫君を擁立し、国家統一を目指して割拠していた……。

 ある日、施設(孤児院のようなモノ)に住む“普通の女の子(9歳)”が、二人組の男に誘われる。

 「来るかい?」

 結局その誘いに応じた女の子は、“お姫様”として担ぎ上げられることとなる。

 「いいか、俺が将軍、コイツが軍師。お前がお姫様な。三人で天下をとりに行くぞ」

 当然ながら、女の子に王家の血筋など無いので、“偽の”が付いてしまうが。
 しかし、偽だろうがなんだろうが“お姫様”であることに変わりは無い。
 偽っていることを知っているのは、女の子本人と、誘ってきた二人組みの男達だけ。他の人々は、彼女を “本当の”お姫様として見ているのだから……。
 そして、“お姫様”として生きることを選択した以上、果たさなければならない役割と義務が存在する。

 何も知らない“普通の女の子”だった少女……彼女が12歳になった時、ついに世界が動き始めた……。
 さぁ、これから彼女はどうなっていくのだろうか?
 これは、その“普通の女の子”が“本当のお姫様”として成長していく物語。
 

 この作品は、主人公“カラスミ”の視点で綴られる形式になっています。
 そのせいなのかどうかは判りませんが、物語がやわらくなっているというか、爽やかになっているというか……。
 一応国盗り物語なので戦争の部分もあるんですけど、トゲトゲしさが全く無い。確かに緊迫感は感じられるが、心臓の鼓動が早まるようなモノではないし。
 ん〜、「どこかほんわかしてて、さっぱりした物語」っていう感じかな。
 ま、少女の成長に比重が置かれているように読めるので、『魔女の宅急便』・『千と千尋の神隠し』といった作品と、雰囲気は似ています。
 
 ちょっと気になるのが、文体。
 改行が多用され、句読点が抜けている部分もチラホラ。
 前者は故意なモノでしょうけど、後者がどうなのか……。(校正が甘いんじゃ……)
 あとは、文と文の間の“切れ”が強すぎる感じが少し。まぁ、それもこの作品独特の雰囲気になっているので問題無し。
 「Web小説みたい」という感想が多いようです。


 では、設定の解説を

 電撃の審査員の方々からは、この作品の独特な世界観が好評だったようです。
和風というか中華風というか、東洋がベースになってます。まぁ表紙を見れば一発で分かるでしょう。
 絵のクオリティも高く、この作品の雰囲気を壊すどころか、さらに深いモノにしています。
 といっても、ファンタジー色は無く、十二国記みたいな作品というわけではありません。(若干似ている部分はありますが、十二国記のように固くないです)
 造語も数多く使われており、この世界観がより一層引き出されています。

 ある大陸があり、中央の都のある方は“中原(ちゅうげん)”と呼ばれている。
 舞台は大陸の東、“東和(とうわ)”と呼称されている地域。
 群雄並ぶ乱世の時代。山脈によって囲まれている東和は、中央の勢力争いからこぼれた地方。
 東和を治めていた王が死に、主要な都市が先王の隠し子と呼ばれる姫を擁立し、都市群国家“東和”となっている。
 姫を擁立した都市は“宮都市”と呼ばれ、先に姫を擁立した方から一宮、二宮、・・・となり、七宮までの計七つ存在している。
 中でも、主人公“カラスミ”が居るのが宮都市“カセン”。七宮に当たる。

 ちなみに、本当なら一宮の黒曜姫ただ一人が先王の娘だった。
 しかし、生まれが遅かった為、先王が死んだ後、彼女が起つまでに時間が掛かり、諸勢力が乱立する隙が出来てしまった。
 その結果、いくつかの主要都市が“先王の隠し子”として姫を擁立する結果になった。

 宮都市と姫の呼称は、一宮から“シンセン(旧王都)―黒曜姫―”“スズマ―翡翠姫―”“ナツメ―常磐姫―”“ツヅミ―琥珀姫―”“クラセ―浅黄姫―”“マキセ―萌葱姫―”“カセン―空澄姫―”

 宮都市は“小都”という意味を持つ。
 七つの各宮都市にある商人組合“七葉”が、それぞれの都市を、王都、大都等に昇格させるために鎬を削っている。
 結局、姫は“七葉”に担がれているようなもの。
 姫が都市の代表となっているが、実際の運営は、主に“七葉”の一派と重なる人々が行っている。

 カラスミ、テン、トエ……いろんなキャラがいますが、私のオススメは“衣装役さん”。
 出番は滅茶苦茶少なく、脇役の彼女ですが、かなり良い味出してます。読むときはチェックしてみてください。





『七姫物語 (1)』  作者/高野和   (中上)
電撃文庫  イラスト/尾谷おさむ
writer:D-human   bk1/→Amazon

オンライン書店bk1:七姫物語(電撃文庫 0762)

 ある大陸の片隅。そこでは、七つの主要都市が先王の隠し子と呼ばれる姫君を擁立し、国家統一を目指して割拠した。
 その中の一人、七宮カセンの姫に選ばれたのは九歳の孤児カラスミだった。
 彼女を担ぎ出したのは、武人のテン・フオウ将軍とその軍師トエル・タウ。二人とも、桁違いの嘘つきで素姓も知れないが、「三人で天下を取りにいこう」と楽しそうにそう話す二人の側にいられることで、カラスミは幸せだった。
 しかし、彼女が十二歳になった時、隣の都市ツヅミがカセンへの侵攻を始める…。第9回電撃ゲーム小説大賞“金賞”受賞作。時代の流れに翻弄されながらも、自らの運命と真摯に向き合うひとりの少女の姿を描いた新感覚ストーリー。


 物語の始まり―――カラスミとトエ・テンの二人との出会い

 「来るかい?」
 トエさんの声を耳にした。
 やけにはっきり聞こえて、そっと、私は裾間から顔を出した。
 顔を上げてみる
 普通の、ごく普通の人が、私の前に立っていた。
 同じ年頃の背高さんを背後にして、短い黒髪と穏やかな表情をした男の人。
 「一人だけの女の子が僕らには必要なんだ。ただ必要なときに立っていてくれればいい」
 その人は少し身をかがめて、目線を私に合わせてくる。
 元々、大人の人にしては小さめの人だと気が付く。
 「ここにいるより、少し幸せかも知れないし不幸かも知れない。面白い世界を見られるかもしれないし、結局、ここに戻ってくることになるかもしれない。変わった道を、一つ選んでみないかい? 君に損はさせないよう、努力はするよ」


 「よっし、お前、お姫様やれ」
 なんだか楽しそうな声。
 何のことか、考える間もなかった。
 背高さんが構わず続ける。
 「いいか、俺が将軍、コイツが軍師。お前がお姫様な。三人で天下をとりに行くぞ」
 仲良さそうな相方を傍らにして、どこか高いところに顔を向けて笑い出す背高さん。
 私は口を開いて立ちつくしたのだと思う。
 天下という言葉が、何なのかも知らない。
 目の前の人たちが何なのか、聞かされたことが何なのか、頭がいっぱいになる。
 ただ、やたら楽しそうな背高さんの高笑いだけが、はっきりと鮮やかな光景。
 私の中で、知らないことと、知りたいことが溢れそうになる。
 何か知っていそうな、どこかいつも考え事をしているような、もう一人へ視線を向ける。
 困ったような顔。だけど、何だか、楽しそうな顔。
 色々なことが、頭と胸をいっぱいにする。
 私はその年、九つだったと思う。
 年始めの一の月、命月。



 カラスミと二人が出会って三年。平和な時代は終わり、東和に不穏な空気が漂い始める……。

 「カラ」
 「はい?」
 トエ様に応じる。
 カラと呼ぶときは、なんだか優しい時。
 「戻りたくないかい?」
 「どこにです」
 「只の子にだ」
 真面目なのだろうか、少し苦手な話題。
 「一度、只の子供に戻るかい」
 「出来るんですか?」
 「出来るよ。もしもの時は、君は本当に普通の子に戻るといい」
 もしもというのは、お城を逐(お)われるときだろうか。元々、本物の姫でもないし。
 「もう、紅茶飲めなくなりますね」
 私の手の中。ほぼ完全な月の顔が、紅茶の水鏡に揺らいでいる。
 紅茶は高い。この辺りでは採れない。
 お姫様になれて一番嬉しかったのは毎日ご飯が食べられ、毎日お風呂に入れることで、二番目に嬉しいのが紅茶の香りと知ったことだった。



 そして、カセンの街で出会った黒衣の女。まだ少女と呼べる年齢だろうに、随分と大人びた顔立ちに落ち着いた表情をする、不思議な女性。
 彼女は、いったい……。

 「でも、空澄姫は七宮城を出てくるべきではないでしょうね」
 社殿の屋根を見下ろす横顔に、生真面目な表情が出た
 「どうしてでしょうか?」
 何か恐いうわさでもあるのかと、不安を抑えて訊き返す。
 「姫は知りません。七宮の中で一番、世俗を離れることが出来ていた方ですから」
 「何をです?」
 「利権の象徴をする過酷さです」



 ―――戦の幕が切って落とされた時、カラスミはどうするのか!?

 

 高野氏のデビュー作にして、第9回電撃ゲーム小説大賞“金賞”受賞作。
  主人公“カラスミ”の視点で綴られる形式になっています。

 『七宮物語』第一巻目のこの作品は、テン・フオウ、トルエ・タウ、カラスミ。人の出会いから始まり、それから三年後の、後に“七姫戦争”と呼ばれる動乱の始まりである”七宮 VS 四宮(+同盟関係の三宮) の戦い”が決着したところで終わりを迎えます。
 
 この作品は、主人公“カラスミ”の成長に重量がおかれてますね。シリーズ解説でも書いてることですけど。

 何も知らない状態から、姫として生活するだけの知識を叩き込まれただけなので、 “姫”の意味、役割、義務など、まだよく分かってない状態の“カラスミ”。
 それがラストでは、いろんな人との出会い、そして戦争という荒波を乗り越えることで一歩成長し、“お姫様らしく”なった彼女が見れるわけです。

 前半部分は、“姫”としての日常と、“只の子供(ちょっと違いますが)”としての市井での生活が描かれており、後半からは、乱世に相応しく戦争が始まります。
 知謀策謀が渦巻く“七姫戦争”開幕! といっても、ドロドロしたものではありません。やっぱり、どこかさっぱりしています。
 もっとも、戦争であることに変わりはありませんが。
 
 前半での“日常”から、後半の“非日常(戦争)”への移行。
 前半部分で“日常”を知ることが出来るだけに、後半部分の“非日常”での主人公(カラスミ)の無力感が際立ちます。
 まぁ、いきなり戦争の中に叩き込まれたら、大抵の人間は無力になりますわな。
 
 そして、今回の物語の中で少し成長したカラスミが、“空澄姫”に戻るシーン。最高です。イラストもあって、言うこと無し。デザインを担当された方々、ホント良い仕事してます。
 
 物語の締めもバッチリ。良い感じで余韻を残していて、続巻への期待が高まるように出来ています。

 『魔女の宅急便』や『千と千尋の神隠し』なんかが好きな人なら、この作品は“良作”と思えるのではないでしょうか。
かなりオススメです。





『七姫物語 第二章 世界のかたち (2)』  作者/高野和  (中上)
電撃文庫  イラスト/尾谷おさむ
writer:D-human   bk1/→Amazon

七姫物語 第2章 世界のかたち(電撃文庫 0886)

 今ではない時代、ここではない場所。
 そこでは、七つの都市が先王の隠し子と呼ばれる姫君を擁立し、国家統一を目指して割拠した。
 その中の一人、野心に満ちた大嘘つきの若者、テンとトエに担がれ、七宮カセンという都市国家を統べる姫となった少女カラスミ。
 名もなき市井の人であったはずの彼女が、姫としての道を歩み始めた時、世界が静かに動き始めた…。
 第9回電撃ゲーム小説大賞「金賞」受賞作、待望の続編。

 

 冬が訪れ、各都市は春に向けて水面下で動き出す。特に、四宮と同盟関係にあった三宮―ナツメ―は、七宮―カセン―と戦う為に力を蓄えようとしていた……。
 その頃七宮は、四宮―ツヅミ―との戦の事後処理を終え、カセンの年越し祭りの準備に取り掛かる。
 四宮との戦の影響が残るなか、祭りを無事に終えることが出来るのだろうか……。



 真実はいつも一つじゃない。
 きっと、複数あって、私達はその中から道を探している。

 

 “カラカラ”として街に降りるカラスミに、衣装役さんが言う。人生の先輩として……七宮に暮らす者として……。

 「お知りになりたいことに対して、背伸びをしすぎないことです。この世の行いのことは、ほとんど、小さな物事の積み重ねです。仮に、決定的な役割を果たしたのが、七宮の姫様や他の方々としても、どなたかが絶対に悪いわけでも正しいわけでもありません」
 もしかしたら、この人は私よりも、いや、多分、私よりずっと、トエ様やテン様、他の方々の行いを知っているのかも知れない。
 それは、お城で控えていてくれる侍従長さんとかも同じかも知れない。
 衣装役さんの言葉は続く。
 「人の世のことは人の手で為されます。ですが、様々な制約や不都合が重なって思うようには参らないことが多々ありましょう。大方の場合、誰もそれに責務を支払うことは出来ません。ご無理をなされば琥珀姫のように立つ場所を見失います」

 

 空澄姫として、自分はどう在りたいのか。どう在るべきなのか。

 私は争いをしたくない。
 無くすことは無理だと思うけれど、せめて、一番、小さく済ませたい。
 きっと、東和の姫達はそのために出そろったのだと思う。
 東和の人達は、恐い軍人さんや、軍隊や、果てしない確執や、絶対的な信仰や、民族の縛り、そうしたことのために争いたくなかった。
 争いに慎ましいかたちを求めて、季節と祭霊とが紡ぐ、四季世に仕える巫女姫を求めた。
 きっと、そうだと思う。
 それも、世界のかたちの一つに過ぎないかも知れない。
 「テン様やトエ様が世界の天辺目指してどこまでも。私は、それが少しでも無益な争いを生まないように、空色のお姫様」
 それが、東和七宮空澄姫殿下のお仕事で
 「私が追いかけた日々で」
 目を瞑る。
 そろそろ、眠らないといけない。
 「そうですよね、クロハさん」


 祭りが始まり、トエがカラスミに言う。祭りを観てきたらどうかね、と。

 観たい気もしたし、露店を歩きたいとも思ったけど、首を振る。
 「私は、もうお祭りの中にいます。三年前始めました」
 そうだと思う。きっと、だから、私は楽しくて、良いことも悪いことも、そのために受け入れられた。
 きっと、そうだと思う。
 三人で始めたお話は、私にとって、どんなお祭りよりも大事で目映かった。
 だから、あっちにまで遊びに行けない。ぼんやりしていると、この人やあの人に置いて行かれるから。


 そして、カラスミは黒衣の少女“クロハ”との再会を果たす。彼女と別れた後、カラスミは……

 静かな雪が似合う人だけれど、あの人は立ち止まらない人だ。
 方向こそは違うのだろうけれど、私の側の二人に少し似てる。
 そして、方向の違いで、多分、どこかで戦わなければいけない人達。
 「あの人、普通じゃ幸せになれない人だ」
 「そうだな」
 ヒカゲさんは呟いたあと、珍しく言葉を続けた。
 「あんたに少し似てるよ」


 ―――そして、また季節が巡る。

 

 この作品、解説するより本文抜き出した方が分かりやすいと思うので、抜粋箇所増量中です。(著作権とか大丈夫かなぁ……)


 一巻は“出会い”から始まりましたが、二巻は逆で、“別れ”から始まります。
 この巻は、一巻で起きた戦争の後始末。それに加えて、次の戦いへの前振り(各都市の動き)といったところでしょうか。二姫・三姫・五姫・六姫は、この巻が初登場になります。

 舞台はカセンの雪祭り
 一巻のように戦争・政治的な部分は少なく、どちらかというと民衆寄りのお話。
 “カラスミ”も祭りを楽しむために行動しているので、まったり感が強いです。

 今回の大部分は、カラスミは“空澄姫”としてではなく、お忍びモードのお側付き見習い“カラカラ”として動きます。
 そんなわけで、今回は“お姫様”の成長ではなく“カラスミ”という少女の成長、と表現すべきでしょう。

 作品のクオリティーに劣化は見られませんでした。相変わらず良い仕事してます。イラストは一巻のときより綺麗になっていて、さらに満足。
 一作目は良くても、二作目では微妙……って作品が結構ありますからねぇ。一作目のクオリティーを保つ、もしくはさらに良いモノにするっていうのは難しいことでしょう。まだ二作のみとはいえ、それを完遂した高野氏は凄い御方です。
 ―――できればもう少し刊行ペースを上げていただければ言うことは無いのですが……。まぁクオリティー下げるよりは何倍もマシなので、のんびり待たせていただきます。……しかし、この刊行ペースのままだと完結するのに何十年掛かるんだ……。